愛知県総合教育センター版KNOPPIX
(APEC-KNOPPIX)

1.KNOPPIXとは

   KNOPPIXは、ドイツのKlaus Knopper氏が開発したCD-ROM1枚で起動するLinuxディストリビューションです。起動時にパソコンに装着されたネットワークカードやビデオカードなどのハードウェアを自動認識し、ユーザに煩雑な操作を求めることなく即座に利用可能な状態になります。CD-ROMのみで起動するので、ハードディスクにインストールされている環境に依存することなく、確実に同じ環境を再現することができます。これは、教育の場において、実習環境の維持管理などに役立ちます。また、児童生徒にCD-ROMを配布することによって、学校と同じ環境での自宅学習も可能になります。
   KNOPPIXに収録されているアプリケーションは種類も豊富で、インターネットやオフィス系のアプリケーションだけでなく、グラフィック系アプリケーションやサーバ機能、管理ツールなどをハードディスクにインストールすることなく利用できます。

   日本では独立行政法人産業技術総合研究所(以下、産総研)が日本語版KNOPPIXを開発しており、産総研のWebサイトからKNOPPIXのCD書込用イメージファイルや関連情報を入手することができます。産総研版KNOPPIXのデスクトップ環境を図1に示します。


図1 産総研版KNOPPIX3.4のデスクトップ環境

2.KNOPPIXの特徴

   KNOPPIXには次のような特徴があります。


3.教育の場におけるKNOPPIX

(1) 教育利用を目的としたKNOPPIX

   産総研版KNOPPIXは汎用的に作られているため、さまざまな分野のソフトウェアが収録されています。そして、KNOPPIXは多様な用途にカスタマイズできるよう、再構築する仕組みを提供しています。教育の分野では大学や専門学校、企業、個人などがそれぞれの教育の場に適したKNOPPIXを作成し、インターネット上で公開しています。
   教育利用を目的としたKNOPPIXの例を表1に示します。

表1 教育利用を目的としたKNOPPIX
KNOPPIX Edu3 東北学院大学が作成した授業コンテンツとアプリケーションを組み込んだKNOPPIX EduTGの汎用化版。EduTG版を工学部生に配布している。
KNOPPIX/Math 数学に関係したパッケージを収録したKNOPPIX。汎用数式処理システムや統計処理、プログラミング環境などが同梱されている。主に大学で利用されている。
Freeduc-cd 海外で教育用に作られたKNOPPIX。子ども向けアプリケーションが収録されている(英語版)。

(2) 実習環境の維持管理

   学校での実習環境を維持管理する際に発生する、次のような問題点をKNOPPIXは解決してくれます。


4.愛知県総合教育センター版KNOPPIX(APEC-KNOPPIX)について

   学校では既存のKNOPPIXを利用するだけでなく、学校の状況に応じたアプリケーションや教材が収録されたものを利用すれば、授業に最適な環境での実習が可能になり、より学習効率の向上が期待できます。これまでも上記のように大学等でカスタマイズされたものは存在しましたが、高校生以下を対象とした教育を目的に作成した例はほとんどありませんでした。
   そこで、愛知県総合教育センターでは授業等で活用できそうなさまざまな分野のソフトウェアを検証し、学校での活用を目的とした、愛知県総合教育センター版KNOPPIX「APEC-KNOPPIX」を作成しました。


図2 APEC-KNOPPIXのデスクトップ環境

   「APEC-KNOPPIX」の主な特徴は次のとおりです。

5.APEC-KNOPPIXのCD作成

(1) ダウンロード

   APEC-KNOPPIXを利用する場合は、まずISOイメージファイルを入手してCD-R/RWなどに書き込む必要があります。CD-R/RWに書き込み可能なISOイメージファイルを以下からダウンロードしてください。

APEC-KNOPPIX20050908版 based on KNOPPIX3.4(約700MB)[httpダウンロード]
※お使いのブラウザの設定によっては、ISOイメージファイルのデータがブラウザに表示されてしまう場合があります。そのような場合は、上記リンクを右クリックして表示されるメニューよりリンク先のファイルを保存するようにしてください(例:Internet Explorerの場合は[対象をファイルに保存...])。

(2) CD-R/RWへの書き込み方

   CD-R/RWへAPEC-KNOPPIXのISOイメージファイルを書き込む際は、以下の点に注意してください。

6.APEC-KNOPPIXの使い方

(1) 起動から終了まで

ア) 起動

   PCの電源を入れ、すぐにAPEC-KNOPPIXのCDを入れます。 CDからデータを読み込み始め[*1]、しばらくするとbootプロンプトが表示されます。必要に応じて起動オプションを指定します。しばらくすると、次のような画面が表示されます。

[*1]コンピュータによってはCDから起動できない場合があります。また、BIOSの設定でCDから起動できるよう設定できる場合がありますので確認してください。

図3 APEC-KNOPPIXの起動画面

イ) アプリケーションの起動

   APEC-KNOPPIXは、Windowsと同じような感覚でアイコンやメニューからアプリケーションプログラムを起動することができます。授業に利用できるアプリケーションは、パネルの中にあるAPEC-KNOPPIXメニューにまとめられています。


図4 APEC-KNOPPIXメニュー

ウ) 終了

   KNOPPIXの終了は左下隅のKメニューより[ログアウト "knoppix"]を実行し、[コンピュータを停止]を選択し[OK]ボタンをクリックします。


図5 セッション終了画面

最後にCD-ROMがイジェクトされ、[Enter]キーを押すことによってコンピュータの電源が切れます。

   詳しくは、研修テキスト「KNOPPIXの基礎」をご覧ください。

(2) 基本操作

   APEC-KNOPPIXはデスクトップの標準ウインドウマネージャとしてKDE(The K Desktop Environment)を採用しています。KDEはX Window Systemを利用した統合デスクトップ環境で、アプリケーションやさまざまなユーティリティ、システムの設定を含めて、統一された環境を実現しています。
   KDEはWindows系OSのように直感的に操作することができます。KDEが起動すると、図3のように画面の下部(パネル)とデスクトップ左側にアイコンが表示され、アプリケーションなどの起動はこれらアイコンをクリック[*1]したり、APEC-KONPPIXメニューやKメニュー(KDEメニュー)から実行します。
   日本語入力もWindowsと同様、[半角/全角]キーで切替ることができます。

[*1]Windows系OSと異なりシングルクリックが基本となっている。

   詳しくは、研修テキスト「KNOPPIXの基礎」をご覧ください。

(3) データの保存

   APEC-KNOPPIXで作成されたデータの保存は、USBフラッシュメモリなどを利用します。APEC-KNOPPIXの起動中でもUSBフラッシュメモリを挿入すれば自動認識し、データを保存することができます。また、Windowsの共有フォルダやファイルサーバにも保存することができます。「継続的なホームディレクトリ」(後述)を作成した場合は、ホームフォルダ(ホームディレクトリ)に保存することによってUSBフラッシュメモリなどの媒体に保存することができます。


図6 Konquerorでファイルサーバにアクセス

   詳しくは、研修テキスト「KNOPPIXの基礎」をご覧ください。

(4) 環境設定

ア) 継続的なホームディレクトリの作成

   APEC-KNOPPIXでは、ホームディレクトリ(ユーザに割り当てられた領域)をUSBフラッシュメモリなどに保存する仕組みを提供しています。このホームディレクトリには、アプリケーションで作成したデータファイルやデスクトップ環境の設定などが保存されます[*2]。
   USBフラッシュメモリを認識させて、Kメニューより[KNOPPIX]-[Configure]−[継続的なKNOPPIXホームディレクトリの作成]を選択し実行します。以降は、ホームディレクトリが保存されているUSBフラッシュメモリを挿入した状態でAPEC-KNOPPIXを起動し、以下の起動オプションを指定することによって保存されたホームディレクトリが利用できるようになります。

boot:hs
または
boot:knoppix home=scan
[*2]継続的なホームディレクトリを作成してデータをホームフォルダに保存した場合、Windowsからはそのデータは読み込むことができません。

イ) 環境設定の保存

   ネットワークやプリンタの設定などは上記のホームディレクトリには保存されません。これら環境の設定情報を保存する場合は、保存先のUSBフラッシュメモリなどを認識させた後、Kメニューの[KNOPPIX]-[Configure]−[KNOPPIXの設定を保存]を選択し実行します。
   保存した環境設定を次回起動時に反映させるためには、環境設定が保存されているUSBフラッシュメモリなどを挿入した状態でAPEC-KNOPPIXを起動させ、以下の起動オプションを指定することによって環境を読み込ませます。

boot:knoppix myconf=scan

   なお、環境の設定を変えた場合は、再び[KNOPPIXの設定を保存]を実行して、設定の内容を更新する必要があります。

ウ) スワップファイルの作成

   APEC-KNOPPIXを快適に利用するには、起動するアプリケーションにもよりますが最低256MB以上の実メモリが必要となります。実メモリが256MB以下でもスワップファイル(仮想メモリ)を作成することによって、安定した動作環境を得ることができます。スワップファイルは、USBフラッシュメモリやFAT形式のハードディスクなどに作成することができます。
   スワップファイルの作成は、Kメニューの[KNOPPIX]-[Configure]−[スワップファイルの設定]を選択し実行します。以降はスワップファイルの保存先である媒体(USBフラッシュメモリやハードディスクなど)を起動時に接続してあれば、スワップファイルを自動的に認識します[*3]。

[*3]スワップファイルを認識している状態で、保存先のUSBフラッシュメモリなどを抜くとシステムに障害が起きる可能性がありますので注意してください。

   詳しくは、研修テキスト「KNOPPIXの基礎」をご覧ください。

(5) 起動オプション(bootオプション)

   基本的な起動オプションには次のようなものがあります。

表2 基本的な起動オプション
起動オプション例 説 明
knoppix desktop=twm デスクトップマネージャを指定
fluxbox,icewm,kde,larswm,twm,wmaker,xfce
knoppix screen=1280x1024 X Window Systemで使用する画面解像度を指定
knoppix 3 ランレベルに3を指定
knoppix myconf=scan 自動的に保存された環境設定を探し読み込んで起動
knoppix home=scan 自動的に保存されたホームディレクトリを探し読み込んで起動
hs knoppix home=scanと同じ(APEC-KNOPPIX特有のオプション)
expert 一段階ずつ確認しながら起動
knoppix26またはlinux26 カーネル2.6を起動(標準はカーネル2.4)

   複数のパラメータを設定する場合は、半角スペースを空けてパラメータを指定します。
   例)boot:knoppixdesktop=twmscreen=800x600myhome=scan(△:半角スペース)

   詳しくは、研修テキスト「KNOPPIXの基礎」をご覧ください。

(6) ハードディスクへのインストール

   APEC-KNOPPIXはCDから起動できるLinuxですが、既存の環境(Windowsなど)をできるだけ変えずにハードディスクにインストールして利用することができます(ここでいうインストールとは、APEC-KNOPPIXのイメージファイルをハードディスクにコピーすることを言います)。コンピュータ起動時に表示されるブートローダの画面で既存のOSと切り替えて利用することができます。ハードディスクからAPEC-KNOPPIXを起動することによって、APEC-KNOPPIXの起動時間や、アプリケーションの起動時間などを短縮することができます。起動後の使い方はCD起動と全く同じです。CDの読み込み時間が長いと感じる場合は、ハードディスクへインストールする方が良いでしょう。
   APEC-KNOPPIXをハードディスクにインストールするには以下の要件を満たす必要があります。

[インストール]
Windows 2000またはWindows XPで、APEC-KNOPPIXのCDの中にあるinstall2win.batを実行し、指示に従いインストールをしてください。
[起動方法]
コンピュータ起動時に表示されるOSの一覧で「GNU GRUB for KNOPPIX」を選択してください。

7.各教科等で活用可能なソフトウェア

   「APEC-KNOPPIX」に収録した主なソフトウェアの一覧を利用可能な教科等の例とともに表3に示します。
表中のアイコンは以下の教科等を意味します。
情報、工業、商業、理科、数学、音楽、英語、家庭、小学校、

のアイコンをクリックするとPDF形式の体験マニュアルが別画面で表示されます。
すべての体験マニュアルをまとめてダウンロードする場合は以下をクリックしてください。
表3 各教科等で活用可能なソフトウェア一覧
マニュアル ソフトウェア 分類 説明 教科等の例
Apache
(438KB)
Webサーバ インターネット上で稼動する標準的なWebサーバ。

Audacity
(343KB)
オーディオエディタ オーディオ編集ソフトウェア。WAV、AIFF、Ogg Vorbisなどさまざまなファイル形式に対応している。
gcc
(309KB)
コンパイラ Kate等のテキストエディタでコーディングしたC言語のソースプログラムをコンパイルできる。
KGeo
(417KB)
幾何学作成 コンピュータ上で幾何学表示ができる。また、幾何的な図を見たままに動かしたり変化させたりできる。
  Konqueror
ウェブブラウザ
Webブラウザ/
ファイルマネージャ/
ファイルビューア
KDE標準のWebブラウザ/ファイルマネージャ/ファイルビューア。ネットワーク上のMicrosoftネットワーク共有にもアクセスできる。
KStars
(301KB)
デスクトップ
プラネタリウム
世界各国の地点から見た星空を出力でき、画面上の星・星雲・銀河に関する情報を取得できる。インターネットを利用して、ハッブル望遠鏡の画像等を見ることもできる。
  Mozilla Browser Webブラウザ Netscape Navigatorを基にオープンソースで開発されている。
  OpenOffice.org 統合アプリケーション ワープロ(Writer)(336KB)、表計算(Calc)(351KB)、プレゼンテーション(Impress)(167KB)の他、図形描画(Draw)(395KB)、数式作成(Math)、Webオーサリング(HTML Editor)をまとめたオフィススィート。
QCad
(544KB)
機械系CAD 製図やテクニカルイラストの作成に利用できるシンプルな二次元CADツール。AutoCADのDXFファイル形式に対応している。
Scribus
(404KB)
DTP ページレイアウトソフトウェア。ドキュメントを自由にレイアウトしながら作成することができ、学校紹介用パンフレットや学級新聞等に利用できる。
  Sylpheed 電子メールクライアント Microsoft Outlook Expressによく似た国産のメーラー。複数アカウントに対応し、振り分けなどの機能がある。
The GIMP
(450KB)
フォトレタッチ ディジタルカメラなどで撮影した画像データを加工できる、本格的なフォトレタッチソフトウェア。


XFig
(370KB)
描画ツール ドロー系の描画ツール。円・矩形・折れ線・スプライン曲線・テキストなどを組み合わせることによって図を作成する。

以下は、APEC-KNOPPIXに追加収録されたソフトウェア(産総研版には含まれていない)
  CCaslII 言語シミュレータ 情報処理技術者試験センター発行の「(CASLII)アセンブラ言語の仕様」に完全準拠する「CASLII」のシミュレータ。
  TinyCOBOL コンパイラ Kate等のテキストエディタでコーディングしたCOBOL言語のソースプログラムをコンパイルできる。
Gnuplot
(287KB)
グラフ作成 簡単に2D、3Dのグラフが作成できるツール。関数のプロットだけでなく、データをファイルから読み込んでプロットすることもできる。


KSEG
(323KB)
幾何学作成 コンパスと定規を用いた幾何学図形の作成がコンピュータ上で簡単にできる。
xmaxima
(200KB)
数式処理 本格的な汎用数式処理システム。数式の展開・因数分解や微分・積分あるいは方程式を解いたり、2D、3Dのグラフを描いたりできる。
Squeak(*1)
(245KB)
仮想マシン環境 マルチプラットフォームで動作する仮想マシン環境。ペイントの感覚で絵や図形をを描き、それをタイルスクリプト(簡単なプログラミング)で制御し動かすることができる。
TuxMathScrabble
(383KB)
算数クロスワードパズル コンピュータと対戦するゲーム形式で、与えられた数字と演算を組み合わせて数式を作成しクロスワードを完成させる。レベルが4段階ある。
  TuxTyping タイピング ゲーム形式でアルファベットのタイピングの練習ができる。複数レベルがあり、簡単な英単語でのタイピング練習もできる。
TuxPaint
(953KB)
ペイント 小学校低学年でも使えるお絵かきソフトウェア。絵の具の色を選んで絵を書くような感覚で操作することができ、さまざまなスタンプや図形も簡単に絵の中に入れることができる。描かれた絵はファイル名を意識しないで保存したり開いたりすることがでる。
geg
(GTK+ Equation Grapher)
(416KB)
グラフ作成 1変数の数学関数をプロットするグラフ作成ツール。 x 軸、y 軸との交点や、2つの関数の交点を求める (方程式を解く) ことができる。
Dr.GEO
(379KB)
幾何学作成 コンピュータ上で幾何学図形の表示ができる。また、幾何的な図を見たままに動かしたり変化させたりできる。マクロ機能やスクリプト機能を有する。

8.コンピュータ管理面で利用できるソフトウェア

   コンピュータ管理面で利用可能と思われるソフトウェアを表4に示します。

表4 コンピュータ管理面で利用可能なソフトウェア一覧
マニュアル ソフトウェア 分類 説明
  Ethereal LANアナライザ ネットワークを流れるパケット情報を取得し、解析・表示することができる。
  Partition Image バックアップツール ハードディスクのパーティションの内容を1つのイメージファイルとして書き出すことができる。
QTParted
(377KB)
パーティション操作ツール パーティションの作成、削除、容量変更が可能である。
Samba
(419KB)
ファイルサーバ Windowsクライアント用のファイルサーバ。
  SSH 暗号化通信 ネットワークを流れるデータを暗号化してやり取りすることができる。ssh、sftp、scpなどのサービスがある。

9.問い合わせ先

   APEC-KNOPPIXに関する御意見や御感想、授業での実践事例などがありましたら下記までお寄せください。今後の参考にさせていただきたいと思います。

knoppix@aichi-c.ed.jp

10.KNOPPIX関連の研修テキスト

   以下は、愛知県総合教育センターで作成したKNOPPIX(含APEC-KNOPPIX)に関する研修テキストです。より詳しくKNOPPIXを知りたい方は是非ご覧ください。

「APEC-KNOPPIX」(愛知県総合教育センター/2005年)
APEC-KNOPPIXを使用した「学校において活用できるフリーソフトの実習」の研修テキスト。
「KNOPPIXの基礎」(愛知県総合教育センター/2004年)
APEC-KNOPPIXのベースとなっている産業技術総合研究所版KNOPPIX3.4の入門テキスト。
「起動不能Windows機の救済」(愛知県総合教育センター/2004年)
KNOPPIXをWindows機のレスキューCDとして利用する方法を解説。

11.参考文献・URL

(1) 書籍

(2) URL