交流実践のはじめにもどる>

テレビ会議システムを利用した心の距離を縮める遠隔授業
高等部2年 音楽「ボイスパーカッション」の実践
愛知県立岡崎特別支援学校
 

   本校は,主に肢体不自由の児童生徒が通う特別支援学校である。多様な障害と児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた教育を実践している。また,障害が重度であったり重複しているため特別支援学校に通学困難な児童生徒に対し,教員が家庭や児童福祉施設,医療機関等を訪問して指導する訪問教育(※)という学習形態もとっている。
 訪問教育を受ける生徒(以下、訪問教育生徒)の一人は,重大な心臓疾患を患っている。その生徒は,中学部までは普通に登校して友達と一緒に授業を受けていた。しかし,病状が進み,運動や外出制限されることとなったため,高校進学に合わせて本校に転校し,訪問教育を受けることとなった。
 そこで,本校の生徒と訪問教育生徒が交流を図りやすい音楽の授業において,テレビ会議システムで両者をつなぎ,リアルタイムでの合同遠隔授業を行うこととした。訪問教育生徒が,学校にいるような気分になり,たくさんの友達と一緒に授業を受ける喜びを再び感じられることを期待し,本実践に取り組んだ。


※「
訪問教育は、障害の状態が重度であるか又は重複しており特別支援学校に通学して教育を受けることが困難な児童生徒に対し,特別支援学校の教員が家庭,児童福祉施設,医療機関等を訪問して行う教育です」     
               独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所のウェブページ
                          (http://www.nise.go.jp/cms/13,3299,54,248.html)より

1 交流の計画

▲ページの先頭へ

時 期

内  容 

4月

訪問教育生徒との交換日記
訪問教育生徒からのビデオメッセージ

5月

交換日記による交流
テレビ会議システムの体験(学校内)

6月上旬

訪問教育生徒宅との接続テスト
訪問教育生徒との顔合わせと音楽の合同授業

 随時 交換日記での交流,手紙による交流

2 交流の対象

▲ページの先頭へ

高等部2年生生徒10名
高等部2年生訪問教育生徒1名

3 交流の実際

▲ページの先頭へ

(1)自己紹介
 
これまで「交換日記」を活用して本校生徒と訪問教育生徒との交流を進めてきた。しかし,それだけでは,相手がどのような声をしていて,どのような表情をするのかなどが分からない。そこで,相手に声や表情なども伝えることのできるテレビ会議システムを活用し,交流を深めたいと考えた。
 最初の交流では,生徒同士で自分の名前や好きな物など自己紹介を行った。また,授業を担当する教員の自己紹介も行った。見学に来ていた校長や教頭も飛び入りで参加した。にぎやかで和やかな雰囲気で交流が始まった。


(2)
発声練習「アマリリス」
 訪問教育生徒が,友達と一緒に授業に参加していることが実感できるよう,映像や音声で授業の雰囲気を伝えやすい音楽の合同授業に取り組んだ。授業では,最初に口の形を意識しながら声を出す発声練習を行った。学校側の生徒は,一人一人,順に発声練習を行った。訪問教育生徒は,その様子を確認しながら,タブレット端末に向けて写真のような音階が書いてある「ふだ」を出すようにした。「ふだ」を使う理由は,声を出すことによる心臓への負担をできるだけ軽減するためである。学校側の生徒も訪問教育生徒が「ふだ」を上げる様子を画面で確認しながら練習を進めた。
 タブレット端末の機動性を生かし,写真のように授業をしているメインティーチャーや発声練習をする生徒の様子を個別に拡大して映し,訪問教育生徒に授業の雰囲気が伝わるように工夫した。教室全体と個別の二つの視点で,画面を見られるようにした。
また,画面に映る自分の姿に気をとられることなく相手との交流に集中できるよう,双方ともに自分の姿が画面に映らないように配慮した。

(訪問教育側)
音階の書いてある「ふだ」を出す様子 
(学校側)
曲に合わせて発声練習をする様子 
(訪問教育側)
二つの視点で画面を表示
(左側:個別,右側:全体)
(学校側)
自分の姿は表示せず交流相手のみを表示 

(3)ボイスパーカッション「グーチョキパー」
 学校側の生徒は,「グー」「チョキ」「パー」の3つのパートに分かれて,それぞれが一定のリズムを保ちながら一斉に歌い出し,訪問教育生徒は,それに合わせて「グー」「チョキ」「パー」の札を出した。授業をしているメインティーチャーからの適切な言葉かけをしたため,授業の流れにスムーズに入ることができた。ボイスパーカッションの最後にはじゃんけんをする場面があるが,訪問教育生徒は気持ちが高まってきたこともあり,可能な範囲で声を出しながら画面に向かいじゃんけんをしていた。友達と一緒に授業に参加できる喜びが感じられた様子だった。

 (訪問教育生徒宅)
じゃんけんをする訪問教育生徒の様子
 (訪問教育生徒宅)
じゃんけんをする学校側の生徒の様子

4 交流後の感想

▲ページの先頭へ

<学校側の生徒の感想>
 ・交換日記もいいけど,直接話せるっていいなと思った。
 ・文字もいいけど,顔を見て話せるのがいい。
 ・名前を声で呼ばれると,日記で話しかけられるより距離が縮まった。
 ・昨年は高校との交流でテレビ会議をしたことがあったけど,授業を一緒にやったのは
  新鮮だった。

<訪問教育生徒の感想>

5 成果と課題

▲ページの先頭へ

<研究の成果>
 音楽の合同遠隔授業を行うに当たり,インターネットで生じるタイムラグを考慮した授業計画を立てて実践した。また,授業の様子がリアルに伝わるよう,二つの視点(パソコンに接続したウェブカメラで全体の様子,タブレット端末の内蔵カメラで個別の様子)を準備した。そして,授業中,学校側のメインティーチャーから適切な言葉かけをすることによって,訪問教育生徒が授業を傍観したり,みんなから忘れられているような感覚をもたせないようにするなどの配慮をした。
 このように,教員がチームとしてタイムラグを感じさせないように授業内容を工夫したり,見え方・聴こえ方を工夫したりすることは,大変有効な手段であったと感じている。この中で,最も大切だと感じたことは,訪問教育生徒に対する教員の適切な言葉かけである。ハード面とソフト面の相乗効果によって,生徒たちの心の距離を縮めることができたと実感している。


<今後の課題>
 ハード面では,映像や音声の質を確保しタイムラグを生じさせないような環境をつくることが必要だろう。訪問教育生徒宅の通信環境を利用するなどの方法が考えられる。またソフト面では,機器の操作に慣れていない教員でも,手軽に簡単にテレビ会議システムが利用できるように工夫して,今回のような実践が広げられるようにしたい。今後も,音楽の授業以外でも,テレビ会議を利用した合同遠隔授業を模索しながら,生徒同士のつながりを深められるようにしたい。

交流実践のはじめにもどる