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モール法でしょうゆの塩分濃度を求める


1 目的

 しょうゆ中の正確な塩分濃度を、最も一般的な食品中の塩分測定法であるモール法によって求める。

2 準備


 器具 10mLホールピペット、1mLホールピペット、100mLメスフラスコ(透明と褐色)、漏斗、褐色ビュレット
     ビュレット台、電子天秤、スターラー、メートルグラス、100mLコニカルビーカー

 薬品 0.1mol/l硝酸銀水溶液、0.5%クロム酸カリウム水溶液、醤油


3 方法

(1) しょうゆ10mLをメートルグラスでとり、質量を正確に量る。
(2) しょうゆ1mLをホールピペットでとり、100mL用メスフラスコに入れ、蒸留水を標線まで加え、滴定試料とする。

(3) 滴定試料10mLをホールピペットでとり、コニカルビーカーに入れる。
(4) 指示薬として0.5%クロム酸カリウム水溶液2mLをコニカルビーカーに加える。
(5) ビュレットに漏斗を利用して0.1mol/l硝酸銀水溶液を入れる。
(6) ビュレットの始めの目盛りを記録しておく。目盛りは1目盛りの1/10まで読む。
(7) 滴定試料と指示薬の入ったコニカルビーカーに硝酸銀水溶液を滴下する。滴下すると赤くなるが、振り混ぜると赤色は消失する。振り混ぜるにはスターラーを利用するとよい。

滴定前 滴定中

(8) 終点に近づくと、赤褐色の消失が遅くなる。振り混ぜても赤褐色が消えなくなった点を終点とし、目盛りを読む。

終点後(過剰に加えるとクロム酸銀の赤褐色沈殿を生じる)

(9) (3)〜(8)の滴定操作を3回以上繰り返し、滴定に要した硝酸銀水溶液の平均値を求める。

4 結果(例)

(1) しょうゆ10mLの質量
     11.58g

(2) 滴定結果

滴定前の目盛り 滴定後の目盛り 滴下量(ml)
10.49 13.47 2.98
13.47 16.42 2.95
16.42 19.38 2.96
19.38 22.32 2.94
  (平均値) 2.96


5 考察

(1) 0.1mol/l硝酸銀水溶液1mlは食塩何gに相当するか。

0.1 × ――― × 58.5 5.85×10−3 (g)
1000


(2) しょうゆ中の塩分濃度を求める。

5.85×10−3 × 2.96 × 100
―――――――――――――― × 100 15.0 (%)
11.58


(参考)実際のしょうゆの塩分・・・・15%〜16%程度

6 留意点

(1) モール法は食品中の塩分を塩化物イオンを測定することにより求めるので、水道水のように塩化物イオンを含む水や、これで洗ったままの器具を使わないように注意する。

(2) 終点の判断は、赤褐色が消えなくなるところといっても色に幅があり、分かりにくい。よって、あらかじめ終点に達したときの液を取って置き、その色に合わせるように滴定すれば、測定値にばらつきは少なくなる。
色の変化;黄色→黄白色→黄赤色(終点)→赤褐色

中央がちょうど終点

(3) 正しくは使用する硝酸銀水溶液を塩化ナトリウム標準液で標定する必要がある。しかし、塩化ナトリウム標準液をつくるのに1級塩化ナトリウムを2回ほど再結晶して、乾燥させてから、正確に秤量しなければならないので、生徒実験としてそこまで行うのは大変な手間である。また、硝酸銀の粒を砕くことによって、作りたい溶液の濃度に合わせて正確に秤量できるので、塩化ナトリウム標準液で標定しなくても生徒実験として十分な精度が得られる。

(4) 滴定に用いた水溶液は回収し、廃液処理は廃棄物処理業者に委託する。

7 備考

(1) 硝酸銀水溶液と食塩水、硝酸銀水溶液とクロム酸カリウム水溶液の沈殿反応
    Cl
+ Ag → AgCl↓(白色沈殿)
    CrO
2− + 2Ag → AgCrO↓(赤褐色沈殿)

(2) モール法の原理
 銀イオンと塩化物イオンから水に難溶性の塩化銀の沈殿を生じ、しかもそれがクロム酸銀よりも水に溶けにくいことを利用した、塩化物イオンの定量方法である。試料水に硝酸銀水溶液を加えると、塩化物イオンは銀イオンと反応して塩化銀の白色沈殿を生じる。終点の判定には、クロム酸カリウムを添加しておき、過剰の銀イオンが赤褐色のクロム酸銀の沈殿を生成することを利用する。

〈溶解度積(25℃)〉
  [Ag
][Cl]=1.78×10−10 (mol/l)
  [Ag
[CrO2−]=1.29×10−12 (mol/l)

(3) しょうゆ以外にもみそ(みそ汁)やコンソメ、ソース、スナック菓子やインスタントラーメンなど、いろいろな食品の塩分濃度を求めることが可能なので、興味や能力に応じて課題研究としても活用できる。


8 学習できる内容

 ・中和滴定及び、酸化還元滴定で行う実験の操作
 ・Ag、Crの無機化学の分野(AgClの白色沈殿、Ag2CrO4の赤褐色沈殿が見られる)
 ・溶解度積(AgClがAg2CrO4
より先に沈殿することを利用するため)


9 授業(探究活動)での活用例

(1) 用いるしょうゆを薄口しょうゆ(塩分濃度18〜19%)、濃口しょうゆ(塩分濃度15〜16%)2種類を用いて滴定実験を行うと、硝酸銀水溶液の適下量が異なる。
   薄口しょうゆの方が塩分濃度が大きいことが、実験により実感できる。
   次の実験プリント例を活用して実験に取り組む。 実験プリント例

(2) 市販のしょうゆは塩分濃度がわかっているので、その値から逆算して硝酸銀水溶液がどの程度滴下に必要か求めると、濃度計算の練習になる。 


10 参考文献

 風間徹也 「化学と教育45巻1号」 日本化学会(1997)
 左巻健男 「たのしくわかる化学実験事典」 東京書籍(1996)


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