ダウン症

Q1:ダウン症の名前の始まりは

 1866年,イギリスの医師ダウン(John Langdon H.Down)によって,独立した疾患として報告されたのが始まりでですが,ダウン症の存在自体は,そのはるか昔より文献に表されています。
 ダウンの報告書では,平たい顔や斜めにつり上がった眼などの外観上の特徴のある「蒙古人」からとって蒙古症と名付けられました。日本においても,1919年に小児科関係者の間で蒙古症について取り上げられています。
 1959年,フランスのレジェーヌ(Lejeune,j.)らによって蒙古症は染色体異常によるものであることが発見されました。そこで,外観上の類似によって名付けられたこの名称は,科学的な根拠がなく,人種的偏見を与えるものであったため,最初の発見者の名前をとってダウン症と呼ばれるようになりました。
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Q2:ダウン症の原因は

 ダウン症は,染色体異常を原因とする代表的な疾患です。染色体には,44本の常染色体と2本の性染色体があります。染色体異常というのは,数が正常より多かったり,少なかったりする「数的異常」と,染色体の構成の1部が欠けたり,余分なものが付いていたりする「構造的異常」があります。ダウン症は,21番目の染色体に数的異常や構造的異常が認められるものを言います。
 ダウン症の90%から96%が標準型21トリソミーと呼ばれるタイプで,精子や卵子の形成過程で染色体の不分離が生じ,21番目の染色体が1本過剰な状態になっているものを言います。この不分離の原因は現在分かっていません。  戻る

Q3:ダウン症の種類は

 ダウン症は染色体の検査結果によって三つに分類されます。
・ 標準型21トリソミー(全体の90〜96%)
生殖細胞の減数分裂時に染色体の不分離が生じ,染色体の数が47本,21番目の染色体が1本過剰な状態で存在すること。親からの遺伝は関係ありません。
・ 転座型21トリソミー(全体の3〜5%)
常染色体44本は,AからGまでの七つの群に分類できるが,余分な21番目の染色体の一部分がD群やG群の染色体とくっついた状態で存在すること。この型では,遺伝するものが約半数と言われており,兄弟発生の率が高くなります。
・ モザイク型21トリソミー(全体の1〜2%)
体の細胞が正常な染色体をもつ細胞と,21トリソミーの型をした細胞が混ざり合った状態で存在すること。混合の割合は様々で,21トリソミー細胞の割合が低いと典型的な症状が現われにくく,診断が困難な場合があります。診断が見過ごされているものを含めると1%から10%と推定する報告もあります。    戻る

Q4:ダウン症の症状は

 ダウン症児には,個人差はありますが,多くの身体症状や合併症,脳の病理的変化,そして知的面,言語面,運動面などの発達上の遅れが認められます。最も多く見られる身体症状として,筋緊張の低下があります。これは各関節の可動域が大きく,他者から関節を動かされても抵抗が弱くなります。また,眼球の動きや摂食行動,消化器の働きなどにも影響を及ぼすこともあります。
 その他にも身体症状として,以下のようなものが認められる場合が多いですが,すべてのダウン症児に現われるというものではなく,個人差があります。
 眼の両端がつり上がり気味で,内眼角贅皮のため上まぶたの内側が目に少し被さったように見える。鼻の鼻根部は平たく小さい。耳の上部が内側に折れ曲がり耳たぶも小さく丸い。後頭部が平らで頭囲も小さい。手の指が短い。足の親指に弓状紋という指紋がある。腹直筋離開による腹部の大きな膨らみ。停留睾丸や性器の未発達など。   戻る

Q5:ダウン症の知的発達は

 ダウン症児の知能指数は,20以下から60過ぎまでと個人差は大きいですが,20から40までの範囲にある者が全体の80%を占めるという報告があります。乳幼児期からの適切な刺激という点で,早期教育の普及により知的面の発達もかなり改善されてきています。
 また,聞いたことを短時間頭にとどめておくことが苦手なため,聞いたことを伝言したり人の指示どおりに行動したりできないこともあります。教育現場では,言葉掛けといった聴覚にのみに頼った方法だけでなく,視覚を使ったコミュニケーション方法を使用していくことも大切です。  戻る


Q6:ダウン症の性格特性は

 ダウン症児の性格の特性として,古くからよく言われていることに,「陽気で人なつっこく,社交的である」「強情な面はあるが,率直で従順で誰からも好かれる」「音楽が好きで,模倣力に富んでいる」「情愛深く,世話好きである」「いたずら好きである」などがあります。しかし,実際にダウン症児と接して見ると,個人差の方が大きいことは言うまでもありません。
 思春期以降に,抑うつ的な傾向を示す人が見られるという報告もありますので,それを防ぐためにも,学校卒業後,達成感のある充実した生活が送れるように早い段階から将来に向けての準備をしておく必要があります。 戻る

Q7:ダウン症の発生率は

 ダウン症の出生頻度は,約1000人に1人と言われています。母親の加齢とともにダウン症の発生頻度が増加することはよく知られています。母親の年齢が20歳から24歳では1600人に1人の発生頻度が,45歳以上では46人に1人の発生頻度になるという報告もあります。これは,卵子の老化などが原因だと考えられています。父親の年齢とダウン症の発生頻度には,明らかな関連はみられていません。  戻る

Q8:ダウン症の合併症は

 ダウン症児の合併症として最も多いのが,心室中隔欠損,心内膜欠損等の先天性の心疾患(40%)です。続いて多いのが,鎖肛や十二指腸の狭窄や閉鎖といった消化器系の疾患です。眼科的異常としては,屈折異常が多く,斜視や白内障,眼振などがあり目やにが多いことも知られています。耳鼻科的異常では,滲出性中耳炎が多く,難聴の原因ともなり,言語発達上支障となることがあります。その他,急性白血病,甲状腺疾患,首の環軸頚椎形成不全,点頭てんかん,歯の先天性欠如などがあります。これらは,すべてのダウン症児に現われるわけではなく,ほとんど合併症のない場合もあります。また,合併症の中には周囲の人に気付きにくいものもありますので,医療機関での定期的管理が必要だと言えます。  戻る

Q9:健康面で注意することは

 ダウン症の子供たちは、小学校の低学年には,もう肥満傾向を示す子供が多いなど,肥満が健康な生活にとり大きな問題となっています。幼児期より継続した食生活(偏食やおやつの与え方)や運動面の配慮が必要です。
 歯科的問題では,歯茎や骨の組織が弱く,細菌に感染しやすいと言われています。歯並びの悪い子供が多く,隅々までしっかりと歯を磨く習慣を身に付けるだけでなく,歯茎の刺激を行っていくことも大切です。
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Q10:運動するときに注意することは

 ダウン症の子供たちは,マット運動を行う場合に環軸椎の脱臼には留意する必要がありますが,基本的に「やらせてはいけない」というスポーツはありません。しかし,他の障害のある子供たちと比べると虚弱体質であり,心臓に障害のある子供たちもいますので,マラソン等の激しい運動を行う場合には必ず医師の診断を受けた上で行う必要があります。また,個人差を踏まえて,運動の途中で立ち止まったり座り込んだりしても行動を強要せず,多少遅れたり行動が緩慢でも継続して頑張ろうという気持ちを養っていくことが大切です。また,ダウン症の子供たちは,筋緊張の低下や関節の過伸展のために体重支持機能の発達が遅れたり,平衡感覚が弱いためにバランスがとれなかったりといった身体的なハンディのために階段の上り下りや平均台を渡ることを恐れ,その恐れが全身を緊張させ,ちょっとしたことで転げ落ちてしまい,更に恐れを増幅させるという悪循環を生んでしまいます。日常の生活場面や遊びの場面を通して、まずは敏捷性や協応性,平衡性等の調整力を育成し,次に筋力や持久力を育成するというように段階的に基礎的な運動能力を養っていく必要があります。また,階段の上り下りをする場合は,まずは手すりのある階段で友達とぶつかったりしないように配慮したり,幅の広い平均台から始めたりと,失敗をしないでできる環境を用意して行うことで自信をもたせることが大切です。
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Q11:早期療育(教育)は

 出生から6歳までの乳幼児期は,精神的にも身体的にもその基礎が形成される大切な時期です。その大切な時期に,母親の精神的ショックから母子関係が上手く形成できなかったり,誤った情報から適切な刺激を受けられなかったりすると二次的障害を生んでしまうことになります。
 そのため,医療的問題の解決や運動面や言語面,生活面等の発達の促進といった子供への援助だけでなく,養育環境を整えるための保護者への心理的サポートや情報の提供といったことが必要です。医師や療法士,訓練士等の指導・助言を受けながら親子での継続した取組が早期療育の中心となります。  戻る

Q12:言葉の発達を促すためには

 ダウン症の子供たちは,言葉の発達が遅れている,発音が不明瞭で聞き取りにくい,吃音(きつおん)があるなどの言葉の問題を抱えていることが大変多くあります。
 専門機関での相談がまず必要ですが、家庭や学校でも話し言葉だけに気を奪われず,「話す,聞く,考える」を総合的に考えた指導と「お母さんなら,先生なら安心して話を聞くことができる,いいたいことを何の心配もなく言うことができる,聞いてくれる」という言語環境を整えることが大切です。  戻る

Q13:読み書きの指導をするときは

 ダウン症の子供たちは,ほとんどの場合,知的な発達の遅れがあります。そのため文字の習得が困難であったり,文字を習得するまで長い期間を必要としたりします。読み書きの指導をする際,書けない文字ばかり何度も何度も練習するというやり方では,飽きやすく持続することが難しいと言われるダウン症の子供たちにとっては苦痛となり,文字への関心も薄れてしまいます。急がば回れではありませんが,まず,読み書きの基礎能力である視知覚能力を日常生活の様々の場面や,他の教科・領域で総合的に高めていくことが大切です。
 また,読み書きの指導に限らず,子供たちが意欲的に取り組めるように,興味・関心のある題材を使ったり,ゲーム形式で行ったり,ほんの小さな進歩も見逃さず褒めたりすることが最も効果的な指導方法であると言えます。
 こだわり行動にしても,常同行動にしても,まずそれらの行動が本人や周囲の不利益になっているのか確認する必要があります。単なる大人の都合だけでそれを問題行動としている場合も多いのです。  戻る

Q14:活動にうまく参加できないときは

 座り込んで動こうとせず,次の活動に参加できないダウン症児に出会うことがあります。座り込むには,座り込むだけの理由があります。それを,頑固さがダウン症の子供たちの特性などという偏見で片付けることが最も誤った対応だといえます。自分で準備をしようと思っていたのにだれかが先にやってしまったかもしれませんし,自分の帽子を間違えて友達がかぶって行ってしまったかもしれません。言葉でうまく表現できない子供たちの思いをどれだけ分かってあげられるかが鍵となります。その活動が苦手で嫌いな場合は,褒められて認められるような場面をその活動に入れていく必要があります。また,その活動が新しい活動で不安な場合は,事前に活動の内容をしっかりと知らせ見通しがもてるようにする必要があります。このように,子供たちの実態をよく理解し事前に予測して,座り込まないですむような工夫が必要です。これは,障害や不適応行動の種類にかかわらず,起こった後の対応よりも,それを起こさせない環境作りの方が大切だということです。
 それでも子供のわがままとしか思えず,座り込んで動こうとしない場合は,安全面さえ確保できる状況であれば,多少の長い短いの差はあっても必ずそのうち立ち上がって動くのですから,それまで黙って見守るようにして,立ち上がったときに,「昨日よりも早く動けたね」と褒めてあげるぐらいの余裕をもって指導に当たることが大切ではないでしょうか。  戻る


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