障害のある人への対応
聾学校の子供たち

生まれたときから聞こえない子供たち
 聾学校に在籍する子供たちの多くは、生まれながらにして耳元での大声も聞き取れないほど重度の聴覚障害がある子供たちです。
   「大きな音にびっくりしない」
   「名前を呼んでも振り向かない」
   「大きな音がしても、ちっとも目を覚まさない」
聴覚障害児の保護者は、このような心配や不安が募り病院に駆け込みます。

音の聞こえ方(チューニングが合っていないラジオ放送を聞く)
 障害のない私たちが、大人になって難聴になったと仮定します。そうなると、今まで聞こえていた鳥のさえずりや川のせせらぎなど、小さな音は聞き取りにくくなります。さらには、ある程度大きな音でも、高い音が聞き取りにくくなったり逆に低い音が聞き取りにくくなったりします。また、たとえ聞き取れたとしてもはっきりと聞き取れず、まるでチューニングが合っていないラジオ放送のように、雑音が気になり聞きたい音をうまく聞き取ることが難しくなります。
 そこで補聴器を装用して音を大きくして聞くわけですが、それでも音声をしっかりと聞き取ることができるわけではありません。なぜなら補聴器は聞きたい音も聞きたくない雑音も同時に一緒に大きくして耳に届けてしまうからです。
 最近は、聞きたい音をその人の聞こえる周波数帯にシフトしたり、雑音を大きくカットできるデジタル補聴器や、直接聴神経を刺激する人工内耳によって、少し聞き取りがよくなりましたが、それでも私たちのように自然にきれいに聞き取れるようにはなかなかなりません。

手探りの発音(外国語を話すようなもの)
 障害のない私たちは、話すことに何も苦労をしません。それは、生まれたときからいろいろな音や言葉を耳にして育ってきているからです。また、自分が話す音や言葉をそのままフィードバックして、自分の耳で確認できるからです。そのため、間違った発音や言葉は徐々に訂正をして正しく使えるようになっていきます。
 しかし、生まれながら聴覚に障害のある子供や早くに聴覚障害になった子供は、正しい発音で話すことだけでも多くの努力を必要とします。聞いたことのない外国語を正しく発音することと似ているかも知れません。そのため、視覚的な情報(口や舌の形)や残っている聴覚を目一杯活用して発音するのです。フィードバックは難しいので、周囲の人に教えてもらったり、発音の状態を示す機械で確認したりしながら正しい音を身に付けていきます。

言葉の獲得(話し言葉から書き言葉へ)
 聴覚に障害のある子供たちは、正しい日本語の獲得についても想像以上の努力をしています。単語を知らなかったり、間違えて覚えていたりするだけでなく、動詞の活用や助詞、助動詞の正しい使い方にも問題があります。話し言葉では省略してあいまいにしても意味が通じる場合が多いですが、書き言葉になるとある程度正確に表現しないとしっかりと伝えることができません。そのため、正しい日本語の獲得に困難を示す聴覚障害の子供たちにとって、文章の読み取りや作文は特に苦手な分野です。小さいころから経験を言葉にして絵日記等で表すなど、繰り返し学習することで徐々に日本語を獲得していきます。

子供に合ったコミュニケーション手段(伝わる喜び)
 人は人とのかかわりを通して育っていきます。自分の伝えたいことが伝わる喜びはかけがえのないものです。しかし、聴覚障害はコミュニケーションの障害であるため、人とのかかわり、つまりコミュニケーションに大きな問題があります。音声でコミュニケーションを取ることができる子供から、キュード・スピーチや指文字、手話などをコミュニケーション手段として必要とする子供まで、子供たちの障害の程度や様子は様々です。そのため、その障害の状態や発達段階等を考慮して、適切なコミュニケーション手段を考えていかなければなりません。自分の伝えたいことが伝わり、相手の伝えたいことが分かるということを大事にしていきたいものです。

《参考文献》 
  
居住交流校へのリーフレット
 「本校に通う子供たちの障害と一人一人の実態について」愛知県立千種聾学校