Q1 「通級による指導」が必要かどうかの判断は,だれがどのようにして行うのですか。
 基本的には,教育課程の編成権限を有する在籍校の校長が行い,市町村の教育委員会ともしっかりと連携を図ることが重要になります。また,児童生徒の障害の状態等については,専門的な調査や検討が求められるので,市町村の就学指導委員会の意見等も十分に考慮する必要があります。
 判断に当たっては,児童生徒の障害の状態だけでなく,どこの学校で通級による指導を実施するか,その学校までの通学に要する時間はどの程度かなどを総合的に配慮する必要があります。
 最寄りの通級指導教室の所在については,設置状況一覧を御覧ください。


Q2 「通級による指導」の内容は何ですか。
 「通級による指導」は,障害による様々な困難を改善・克服することが主な目的であり,それに沿った自立活動の指導が中心となります。これは,特別支援学校小・中学部学習指導要領に規定する自立活動の目標や内容(参照Q10)を参考に学習内容を行うことです。
 もう一つは,児童生徒の障害の状態に応じ,特に必要があるときは,教科の指導を補充的に行うことです。これも,自立活動に相当する内容の指導を行うことが基本となります。教科の補充指導は,障害の状態に応じた特別の補充指導であって,単なる教科の遅れを補充するための指導ではありません。指導の方法としては,個別指導を中心とし,必要に応じてグループ指導を組み合わせることが適当です。


Q3 「通級による指導」の時間割を考えるとき,どんなことを配慮すればよいですか。
 通級による指導は,その児童生徒の通常の授業時間中に行っても,あるいは放課後に行ってもよいとされています。しかし,いつも同じ時間帯に通級の授業を受けるということになれば,毎週同じ教科や特別活動,道徳の時間の授業が受けられないことになります。年間の教育課程を一通り履修することで教育が成り立つので,できるだけこのようなことが起きないように,通級による指導を受ける時間や曜日を工夫することが必要です。
 また,自校通級の場合は,児童生徒の移動時間が少なく,教員間の連絡が容易なため,通常の学級の時間割の一部を替えて指導を行うことができます。しかし,他校通級の場合は,児童生徒の通学時間や体力的な負担なども考慮して,時間割を考える必要があります。
 通級指導担当の教師が,対象の児童生徒のいる学校まで移動する巡回指導を行う場合は,移動の距離や交通状況,教材の運搬,教師間の連絡などの時間を考えて時間割を作る必要もあります。


Q4 「通級による指導」を受けているときの,通常の学級での授業の補充はどうしますか。
 積み上げが必要な学習で,その指導を受けないと内容が分からなくなるような教科の時間を避ける工夫や,家庭学習で補いやすい内容を学習している時に,通級による指導を受けるようにすることも考えられます。
 また,学級担任や教科担任と連絡を取り合って,通級指導時間に補充をしたり,別の時間に学級で補充をしたりと,その時間の内容をどこで補充するか相談することも必要でしょう。通級指導担当者が,通常の学級に入って指導を行う方法もあるので,指導内容に応じて,工夫をしていくとよいです。



Q5 通級指導教室の児童生徒理解にアセスメントが必要だと言われますが,どんなアセスメントの方法がありますか。
 アセスメントとは,一般的には,「評価」「査定」の意味です。教育活動では,「実態把握」の意味で使われます。児童生徒に対して,適切な教育活動や支援を行っていくために,多くの方法で情報を集め,理解していくことです。
 そして,得られた情報を総合的に整理・解釈し,支援・指導をどのように進めていくかを考えていくことが大切です。また,「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」を作成する上でも,アセスメントに基づく専門的な助言を反映させていく必要があります。
  <アセスメントの領域>         <アセスメントの方法>
  ○ 学力と学習のつまずき………指導,観察,テスト,提出物,標準学力検査など
  ○ 知能・認知機能………………WISC−W,田中ビネー知能検査Xなど
  ○ 行動・生活……………………観察,保護者からの聞き取り,行動チェックリストなど
  ○ 感覚・運動……………………視力・聴力検査,運動能力検査,観察など
  ○ 身体面 ……………………… 観察,保護者からの聞き取り,医学的評価
  ○ 発達経過・家庭………………保護者からの聞き取り,関連機関からの情報収集
  ○ 学校・地域……………………授業参観,面談,関連機関からの情報収集
 専門医の診断結果のほか,学校生活上の児童生徒の行動を観察しその記録を分析していく「行動観察」,家庭生活上の児童生徒の行動等についての情報収集をしていく「保護者からの聞き取り」,客観的に児童生徒の状況を把握するための心理アセスメント「WISC−W」などを活用します。


Q6 通級指導教室で使われている教材には,どんなものがありますか。
○ コミュニケーションの領域
  ・ お話ごっこ(ペープサート・人形など),買い物ごっこ,絵本の読み聞かせなど
○ ソーシャル・スキルの領域
  ・ SSTすごろく,ソーシャル・スキルカード,カードゲーム,ビンゴなど
○ 視覚認知の領域
  ・ 迷路遊び,数つなぎ,間違い探し,図形写し,形はめパズル,ペグさしなど
○ 感覚統合の領域
  ・ 縄跳び運動,かっぽん遊び,風船バレー,風船バトミントン,ビーチボール,ダーツ,ホッピングボール,的落とし遊び,ボウリング,ホッケー,卓球など
○ 手・指の巧ち性の領域
  ・ 折り紙,切り絵,アイロンビーズ,紙飛行機,紙粘土,ビンのふたの開け閉め,ひも結び,工作など
○ 見通しをもつ力の領域
  ・ 予定表の活用,手順を示すカードなど
○ 読み・書きの領域
  ・ 音読…………補助シート,単語を囲むなど
  ・ 漢字学習……市販の漢字学習ソフト,読み方と漢字のカルタ,部首パズルなど
○ 聞き取る力・記憶する力の領域
  ・ なぞなぞ(スリーヒントカルタ),お話クイズ,絵合せ,聞き取り練習CD,聴写,宝探しなど
○ 言語指導に関する領域
  ・ 言葉の訓練カード,おしゃべりバード,吹きもどし,紙風船,シャボン玉,構音訓練のためのドリルブックなど
 これらは,活用されている一部のものです。各教室で児童生徒に適した教材がそれぞれ工夫され,組み合せて使われています。

 

Q7 通級指導教室で,発達障害が想定される児童生徒に教科の補充指導を進めるとき,どんな配慮が必要ですか。
○ 机上には必要なものだけを用意します(雑音や余分な情報は排除する)。
○ 興味のもてるものを具体的に教材化します。
○ 授業に見通しをもたせるため,その時間にやることを明示します。
○ 児童生徒の取組意欲が下がらないように課題の質と量に配慮し,達成感をもたせるように工夫します(スモールステップ)。
○ 得意なことを伸ばし,不得意なことを補うようにします。
○ 聴覚的な情報提供だけでなく,絵カードやピクチャーカードなどを使って視覚的に示すと分かりやすくなります。
○ 教材を拡大して提示すると理解がしやすくなります。
○ パソコンなどの機器を使う方法もあります。
○ 言葉掛けは短くして,肯定的に伝えると安心感が生まれます。
○ 学習がきちんと進められていたら,機会を逃さずにほめることが,「自己肯定感」を育てることにつながります。

 児童生徒の障害の特性によって,配慮すべき点は変わります。
 教科の補充指導は,小学校の中学年以降は,特に重要になってきます。中学校では,教科の学力状況は,生徒に大きな影響を与えます。成績が振るわないことがきっかけで,学校生活への不適応傾向が助長されることもあります。


Q8 通級指導教室に通う児童生徒が,不安定になったり混乱したりしたとき,どう対応すればよいですか。
 発達障害のある児童生徒は,本人が抱える問題や過去の苦しい体験のフラッシュバック,あるいは知覚の過敏さゆえに大きな音や声に過敏に反応してしまうことで,不安定な状態になったり混乱を起こしたりすることがあります。その場合には,まず静かな環境で気持ちを落ち着かせ,落ち着いた後に,本来自分がとるべき行動について考えられるように支援します。
 通級指導教室の支援内容は,情緒の開放による対応だけではありません。不安定な状態や混乱を起こすときの本人の様子や周りの環境をよく観察して,その原因を究明します。それから,改善策として適切に手本を示したり,具体的な対応策を例示したりするなど,本人のスキルアップを意識した対応をしていきます。
 通常の学級の授業や生活,保護者に対しても適切な支援策を講じ,連携して支援を継続していくようにします。

 

Q9 発達障害のある児童生徒が,障害があるために起きやすい二次的な障害とは何ですか。
 発達障害のある児童生徒は,個々の障害特有の症状や問題を示しますが,同時に共通する特性も見られます。
 障害の主な症状のほかに,人や環境のかかわりの中から,別の問題が現れることがあります。周りの様子をとらえるのが苦手だったり,自分の感情をコントロールできなかったり,人付き合いの経験の少なさなどから,自分勝手と思われる言動をすることがあります。失敗する経験を重ねることによって,自信をなくし,劣等感が深まります。小学校の高学年になると,自己理解が進み,自分と周囲の関係がうまくいかないことに気付き,本人も悩みます。人から受け入れられない寂しさと怒りが,様々な心や体の問題行動として表出されます。
 このような二次的な障害は,学習面にも現れます。学習上のつまずきに対する適切な配慮や対応がなされないと,学習全般の遅れを来たし,集団生活で適応していくことが難しくなり,自信をなくし,活動意欲が乏しくなって,目標を見失いがちになります。
 通級指導教室では,つまずきに対する適切な対処方法を探り,支援していくことが大切です。


 

Q10 通級指導教室で行われる「自立活動」の内容は何ですか。
 自立活動は,障害のある児童生徒が自立を目指す活動です。特別支援学校と,それ以外の学校に設けられている特別支援学級,及び通級指導教室で教育活動の一つとして行われ,学習指導要領に規定されています。
 自立活動の目標は,「個々の児童又は生徒が自立を目指し,障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識,技能,態度及び習慣を養い,もって心身の調和的発達の基盤を培う」とされています。
 通級指導教室では,自立活動として,「健康の保持・心理的な安定・人間関係の形成・環境の把握・身体の動き・コミュニケーション」の六つの区分で,指導を考えていきます。児童生徒が様々な困難をもちながらも,自尊感情を育て,安心して毎日の生活を過ごせるように支援していくようにします。
  (自立活動の内容)
1 健康の保持
 (1) 生活のリズムや生活習慣の形成に関すること。
 (2) 病気の状態の理解と生活管理に関すること。
 (3) 身体各部の状態の理解と養護に関すること。
 (4) 健康状態の維持・改善に関すること。

2 心理的な安定
 (1) 情緒の安定に関すること。
 (2) 状況の理解と変化への対応に関すること。
 (3) 障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する意欲に関すること。

3 人間関係の形成
 (1) 他者とのかかわりの基礎に関すること。
 (2) 他者の意図や感情の理解に関すること。
 (3) 自己の理解と行動の調整に関すること。
 (4) 集団への参加の基礎に関すること。

4 環境の把握
 (1) 保有する感覚の活用に関すること。
 (2) 感覚や認知の特性への対応に関すること。
 (3) 感覚の補助及び代行手段の活用に関すること。
 (4) 感覚を総合的に活用した周囲の状況の把握に関すること。
 (5) 認知や行動の手掛かりとなる概念の形成に関すること。

5 身体の動き
 (1) 姿勢と運動・動作の基本的技能に関すること。
 (2) 姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用に関すること。
 (3) 日常生活に必要な基本動作に関すること。
 (4) 身体の移動能力に関すること。
 (5) 作業に必要な動作と円滑な遂行に関すること。

6 コミュニケーション
 (1) コミュニケーションの基礎的能力に関すること。
 (2) 言語の受容と表出に関すること。
 (3) 言語の形成と活用に関すること。
 (4) コミュニケーション手段の選択と活用に関すること。
 (5) 状況に応じたコミュニケーションに関すること。

 参考文献
『改定版「通級による指導の手引き」解説とQ&A』 (文部科学省 編著 第一法規)
『教員研修の手引き』(愛知県教育委員会)
『つまずきのある子の学習支援と学級経営』(東洋館出版社)
『学校で活かせるアセスメント』(明治図書)
『ADHD及びその周辺の子どもたち』(同成社)
『学習障害(LD)及びその周辺の子どもたち』(同成社)